【働き方改革】で中小企業が激減する、日本経済にとって本当にこれで良いのか?問う!
2026年09月26日
働き方改革は日本を活性化させているのか?
― 最低賃金・労働時間・人手不足。現場から感じる大きな矛盾 ―
「働く人を守る」
この考え方に反対する経営者は、ほとんどいないと思います。
長時間労働を減らす。 休日をきちんと取れるようにする。 そして、働く人の賃金を上げて生活を豊かにする。
方向性としては素晴らしいことだと思います
しかし、中小企業を経営する立場から現在の「働き方改革」を見ていると、私はどうしても大きな矛盾を感じます。
働く人を守るための制度が、働く場所である中小企業そのものを苦しめてはいないでしょうか?
最低賃金を上げれば、それだけで豊かになるのでしょうか?
最低賃金が上がれば、働く人の給料は増えます。
しかし、そのお金はどこから出るのでしょうか。
もちろん企業です。
例えば、時給1,100円のパート社員10人を、仮に1人当たり60円引き上げるとします。
1人が月100時間働くだけでも、
60円 × 100時間 × 10人 = 月6万円
年間では72万円です。
さらに、最低賃金だけ上げれば終わりではありません。
これまで1,200円だったベテラン社員と新人の賃金差が小さくなれば、ベテラン社員の給与も上げなければ社内のバランスが取れなくなります。
つまり実際の企業負担は、最低賃金対象者の上昇分だけでは済まない場合があります。
しかも人件費だけではありません。
電気代、ガソリン代、材料費、資材費、家賃、物流費など、あらゆる経費が上昇しています。
その状態で人件費も毎年大きく上がったら、小さな会社はどうすればよいのでしょうか。
「値上げすればいい」は簡単ではありません
「人件費が上がったのなら商品やサービスを値上げすればいい」
理屈ではその通りです。
しかし現実の商売は、それほど単純ではありません。
例えば、今まで1,000円だったサービスを1,200円にしたら、
「高くなったからやめよう」
というお客様が出る可能性があります。
特に、洋服のお直し、クリーニング、飲食店、美容室、小売店、介護、運送など、人の手による仕事が中心の業種ほど、生産性を一気に2倍、3倍にすることは困難です。高齢者ならなおさらです。
機械を一台入れたら売上が2倍になる工場とは違います。
一着の洋服を直す、アイロンをかける、一人のお客様を接客する。 一皿の料理を作るも然り
どうしても「人」が必要なのです。
そのような業種に対して、急激な人件費上昇だけを求めれば、企業は値上げ、人員削減、営業時間短縮などで対応せざるを得なくなります。
場合によっては廃業という選択肢さえ出てきます。
労働時間を減らせ!でも人はいない。
もう一つ私が矛盾を感じるのが労働時間です。
現在、時間外労働には原則として月45時間・年間360時間という上限があります。
長時間労働によって健康を害するような働き方を防止することは当然必要です。
しかし現場では別の問題があります。
「労働時間を減らしてください」
と言われても、先ずは問いたい!それは労働者みんなが希望していることではないはずです、なぜ強制的に一律に制限をかけるのでしょうか?
そして「では、その制限をかけられできなくなった仕事を誰がやるのでしょうか?」
という問題です。
例えば5人でやっていた仕事があるとします。
以前は忙しい時期には多少残業して、みんなで乗り切っていた。
ところが残業を減らす。
仕事量は変わらない。
当然、新しい人を雇う必要があります。
しかし募集しても人が来ない。
ようやく採用できても、人件費は以前より大幅に上がっている。
これは多くの中小企業が直面している問題ではないでしょうか。
こんな矛盾が現場で起きます
例えば、小さな洋服のお直し店を考えてみます。
繁忙期になり、100着の仕事が入ってきました。
お客様は、
「来週までにお願いします」
と言います。
しかしスタッフの残業時間は増やせない。
新しい人を募集しても、技術者はすぐには見つかりません。
ではどうするのか。
①仕事を断る
②納期を延ばす
③値段を上げる
④経営者自身が長時間働く
結局、このどれかになってしまいます。
特に中小企業では、
社員の労働時間を減らした結果、最後は社長が働く
というケースも少なくないと思います。
これを本当の意味での「働き方改革」と呼べるのでしょうか。
「賃金を上げる」だけでは経済は回らない
私は賃金を上げること自体には賛成です。
社員にはできるだけ良い給料を払いたい。
これは多くの中小企業経営者が同じ気持ちではないでしょうか。
問題は、
【企業が稼ぐ力以上のスピードで、人件費だけを強制的に上げ続けること】です。
本来なら、
企業の生産性が上がる
↓
利益が増える
↓
給与を上げる
↓
社員の消費が増える
↓
経済が成長する
という好循環を作ることが理想でしょう。
ところが、
最低賃金が上がる
↓
人件費が急増する
↓
価格転嫁できない
↓
利益が減る
↓
採用を控える
↓
営業時間を短縮する
↓
最悪の場合は廃業する
という流れになってしまえば、本末転倒です。
実は国も「中小企業の苦しさ」を認識しています
2026年版中小企業白書でも、中小企業の持続的な賃上げは重要とする一方で、大企業に比べて中小企業の賃上げ余力は厳しく、賃上げ原資の確保が課題だとされています。
さらに政府は、大企業などの働き方改革によって、その負担が短納期発注などの形で下請け中小企業に押し付けられる「しわ寄せ」の問題についても注意を呼びかけています。
中小企業が必要としているのは、
・人件費上昇分を価格転嫁できる社会
・設備投資や省力化への強力な支援
・社会保険料を含めた税金、企業負担への配慮
・業種や企業規模、地域の実情を考えた制度
・技術者や人材を育成するための支援
ではないでしょうか。
中小企業がなくなれば、雇用もなくなる
日本の8割以上は中小企業、小規模事業者です
地方に行けば行くほど、その会社が地域の雇用を支えています。
そこで働いている人がいて、その家族がいて、その人たちが地域で買い物をして経済が回っています。
だから「労働者 VS 経営者」という考え方ではなく!働く人を守ること。そして、その人たちを雇用している会社を守ること。
この二つは対立するものではなく、本来はセットで考えなければならない問題です。
働く人だけを守って会社が倒れてしまっては、結局、その人の職場そのものがなくなってしまいます。それが続けば多くの人が路頭に迷ってしまいます
本当の働き方改革とは何でしょうか?
私はこう考えます。
社員も豊かになる。会社も利益を出せる。そして経営者も未来に希望を持てる。
この三つがそろって初めて、本当の「働き方改革」ではないでしょうか。
賃金を上げることにも賛成です。
長時間労働をなくすことはケースバイケースで対応(無理は禁物)
しかし、そのためには中小企業が利益を生み出せる環境を同時につくらなければなりません。
最低賃金、労働時間、社会保険料、価格転嫁、人手不足、生産性向上、コスト,人件費増大、税負担。
これらを別々に考えるのではなく、すべてを一つの問題として考える必要があります。
働く人を守るためにも、まず「働く場所」をなくしてはいけない。
これが、中小企業の現場にいる私が「働き方改革」に対して感じている大きな矛盾です。
なお、この文章で触れた「中小企業へのしわ寄せ」は単なる想像ではなく、厚生労働省自身が働き方改革による下請け中小企業への「しわ寄せ」防止を呼びかけています。 また、中小企業庁の2026年3月調査では労務費の価格転嫁率は50.0%ですから、「賃上げを求めるなら、その原資をどう確保するかまでセットで考えるべきだ」という論点はかなり重要だと思います。
働き方・休み方改善ポータルサイト
経済産業省
このまま中小企業がどんどん潰れ、大企業だけの社会になったら?
幸せな日本経済になるのでしょうか?
我々経営者だけでなく労働者そして日本国が大きな岐路に立たされていると思います
