前回の家庭洗濯のウソに続き、
前々から書きたかったテーラーさん(紳士服仕立屋さん)が昔から言っている「スーツはクリーニングにださない方がよい」を否定させて頂きます。
私の祖父も父もテーラーで、テーラーの関係者がたくさんいました。でもそれは30年以上前の話!
戦後大繁盛した業界も50年位で衰退し、今ではほとんどなくなってしまいました。10分の1以下に淘汰された業界です。(度々ブログで書いてますからここは略します。)
テーラーさんの言い分によりますと「ドライクリーニングにだすとウールの油分が抜けてスーツがパサパサ、ツヤがなくなり、型も崩れるからださない方がよい!」と、私も何度も聞いてきました。
素直にそうなんだ~と思って私もスーツは出していませんでした。
ところで洋服直し屋として毎日スーツを扱いはじめて気づいた事があります。
明らかにクリーニングに出していないスーツはわかるのです。
汚れやシミの他に「ほこりっぽい臭いがする!」
この理由は後にクリーニング業界の講習会や関連本を読んでわかりました。
空気中には油分が気化して漂っているホコリがこの油分と一緒に服にくっつくとなかなかとれない、さらに服の繊維は空気のフィルターのようになりますからそれがどんどん中にも入り込み、テーラーが推奨するブラッシングだけではとれなくなり溜まってしまうのです。ではウールの油分は?稀にしか着用しないスーツならよいかもしれませんが毎日のように着るスーツがそのような外的、ホコリや汚れや油分がついて、ウール、本来の油分の良さをキープできるはずがないでしょう。
しかし!
テーラーさん側にも賛同できる事もあります!
昔(30年以上前)のクリーニング屋さんの中には確かにドライクリーニングに出すとスーツがダメになって返ってくることも多かったです。
私も10件以上のクリーニング屋さんに出してきたからわかります。
仕上がりに差があるのです。
酷いところは出したら逆に臭くなって返ってきた(ドライ臭ではなく残留脂肪酸(汚れ))、布地がパサパサ、ツヤがなくなって返ってきた(仕上げ剤不足またはなし)、形が崩れて返ってきた(仕上げ技術不足)
今ではこのようなクリーニング屋さんはなくなったと思います。(?)
このような体験をされるテーラーさんが昔は多かったから
「スーツはクリーニングに出さない方がよい!」と、いわれていたのだと思います。
なんの商売でも大差があるようにクリーニング屋さんでも大差があります。
今ではスーツをより素晴らしく仕上げてくれる努力、勉強されているクリーニング屋さんの方が多いはず!(この中にも差はあると思います)
高級ウールスーツはそのようなところに依頼される方がよいと思います。最近の化繊入り、伸縮性あるようなスーツなら差はわからないと思いますが、よいクリーニング屋さんとお付き合いする事が大切な服をよいコンディションで長持ちさせる条件ですね!
サステナブル社会のためにこれから衣類の大量生産、廃棄の時代は終わります。
良い服、お気に入りの服を大切に長持ちさせるためには家庭洗濯、クリーニング屋さんを上手く使い分ける事が必要だと思います。
レッツリフォームはがんばっているクリーニング業界を応援しています。
【洋服リフォーム業界の歴史(前編)】
日本に和服しかなかった時代から明治維新で洋服が入ってきました。最初は軍服からでした。次第に庶民にも洋服が広がり一張羅というように1、2ヶ月分の給料を注ぎ込み自分のスーツを仕立てる人が増えてきました。
全国各地に洋服仕立て業者(テーラー)が増えてきました。婦人服ももちろん仕立てしかありませんでした。婦人服は(洋装店)といいました。双方合わせて当時、5万人以上の業者が生まれ大きな産業になったそうです。
多くの学校も組合もできました。
私の叔父は当時は忙しくて儲かった!
なんて自慢話をよく聞かされました。
ところが戦後、既製品が増えてきました。
高額なオーダー品(仕立て品)を買えない人達は既製品を買い始めました。当時は「つるし」なんていって仕立て職人は既製品のことを小バカにしていました。
ところが既製品がどんどん氾濫してきて安い上に品質よくデザインもデザイナーと呼ばれる人達がでてきて格好良く作られてきました。若者は既製品を抵抗なく購入するようになってきました。
昭和50年から60年の間についにオーダー品から既製品が主流になってきました。
洋服仕立て業界の繁栄はたった50年足らずで衰退期を迎える事になりました。
次回はその時代の分岐点に立たされた仕立て業界の歩んだ道を書かせて頂きます。